大盗禅師 (文春文庫)



大盗禅師 (文春文庫)
大盗禅師 (文春文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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これは・・・つまんないと思うけど・・・

禅師、由比正雪、鄭成功の間をふらふらするのは主人公ばかりではなく、作者も、のような気がします。決めないでだらだら書く、ということは司馬遼太郎に限ってないとは思うのですが、そんな印象を持ちます。だから全集に収録したくなかったのでは? と勘ぐってしまう。
大司馬遼太郎の著作として異質なので、そういう意味で読む価値はあるように思います。
底知れぬ作家

代表作はほぼ制覇したと思っていたのに、まだこんな快作が残っていたとは・・・!!
司馬先生、本当に底知れない作家ですね。大作家にして大歴史・風土・風俗・宗教研究家でもある
司馬先生のアナザー・サイドとして呪術、幻術といったちょっとオカルトがかった分野の
マニアの顔があります。何たってデビュー作が「ペルシャの?」ですもんね。生涯を掛けた
テーマだった「日本人とは何ものか」を様々な角度から検証しながら活写していった作品郡
はもちろん素晴らしいものばかりですが、まるで余暇を楽しむように書かれた作品群の中でも
本作は傑作に入ると思います。ラスト、出きれば仙八と禅師には乗っ取った船で帰国する
よりは東南アジア大冒険の旅にでてもらいたい・・・そんな続きが読みたいなぁ・・・
仙八は、笑う

謀反人というなんともきな臭い生き物が群像として描かれているわけですが、浦安仙八を中心に据えて物語を読む(というより実際彼がこの物語の狂言回しなのですが)と、「イニシエーション」についての物語として読むこともできます。
一人の青年が少年期を過ごした小世間を出て大世間に飛び込んでゆく。その大世間で青年は、そこで生きることに練達した「大人」たちに翻弄される。そんな世間でなんとか凌いで生きているうちに、青年は「大人」を偉くしているからくりを知り、世間とそこに生きる人の運命の卑小な実体に気づいてしまう・・・こうして仙八は世間で生きることに練達する、つまり「大人」になるわけですが、この物語にはもう一段階先がある。仙八は笑って謀反人になるのです。これはなんとも、痛快だ!

この作品は司馬先生ご本人が全集への載録を拒んだという曰くのあるものなのですが、少しでも興味をもたれたのなら、その辺の来歴は気にせず手にとって読まれることをお勧めします。
わたしはこれ結構好きです。良いと思うんだけどなぁ・・・
トロッと読める本。

 「竜馬がゆく」のように、パリッと読める本ではない。しかしトロッと読める。
 とにかく色々な設定描写が微妙。たとえば主人公。これは必ずしも「大盗禅師」ではない。「仙八」という人物を中心に物語りは描かれる。
 ところがこの「仙八」も決して主人公らしく英雄になりきれない弱さがあり、微妙。
 この「仙八」に付き従う「蘇一官」。彼も微妙。彼を中心に織り成される幻術の世界と現実の世界、これも微妙。
 すべてが微妙ゆえ、決してパリッとは読めない。でもだからこそトロッと何気なく読める。そういう本。
空想と現実が共存する異色作

摂津住吉に生まれた、非凡な剣術の才を持つ浪人浦安仙八が、大濤禅師と出会って徳川転覆を謀る秘密結社で暗躍し、果ては中国にわたって明帝国再興を目指す鄭成功の下で将軍として頭角を現していく。という作品。

物語は、成人したばかりの仙八が、浪人という身分がいかに世間で肩身が狭く、居場所がないものかという現実を目の当たりにするところから幕が開け、そして厳しい現実に直面した直後に怪しい外道の術をあやつる大濤禅師と出会い、思いもよらぬ人生を歩み始めます。

冷静に考えるとかなりはちゃめちゃな内容で、チャンバラ、仙術、妖術などの非現実的なアクションも随所に登場します。特に物語の導入部ではこうしたアクションが多く、最初は「これはファンタジー小説か?」と疑ってしまいましたが、そこは司馬遼太郎。ただのアクション小説で終わるようなことはなく、読み進めるにつれてむしろこうしたアクションが小説の味を引き立てるスパイスのように活きてきます。

なお、本作品では江戸初期の日本、明国の衰退と清国の勃興に直面する中国を舞台に、司馬遼太郎の人間観察、社会観察眼が特に光っていると思います。個人の心理や社会についての考察を、仙八をはじめ禅師、由比正雪、鄭成功、蘇一官といった作品中に登場する個性豊かな人物たちの言葉を借り、深く、するどく描いています。そうした一言一言にはさまざまな意味・思いが込められており、読んでいてさまざまなことを考えさせ、学ばさせてくれます。

空想と現実という相反するものが共存しており、最初はちょっと拒否反応があるが慣れてくると病みつきになる、という、やや"毒"のある内容だと思います。司馬作品としてはやや異色ですが、司馬ファンであれば間違いなく楽しめる一冊だと思いました。



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